唇の腫れは、局所的な問題だけでなく、全身の病気のサインとして現れることもあります。稀ではありますが、繰り返し起こる唇の腫れや、長引く腫れは、体のどこかに別の病気が隠れている可能性を示唆していることがあります。そのような全身疾患の一つに「肉芽腫性口唇炎」(メルカーソン・ローゼンタール症候群の一部症状としても現れる)があります。これは、原因不明の慢性的な炎症によって唇が腫れ続ける病気です。唇全体が硬く、厚く腫れあがり、一度腫れると自然には戻りにくいのが特徴です。口唇だけでなく、顔面神経麻痺や舌の亀裂などを伴うこともあります。また、クローン病やサルコイドーシスといった全身性の炎症性疾患でも、口の粘膜や唇に病変が現れ、腫れを引き起こすことがあります。これらの病気は、消化管や肺など全身の様々な臓器に炎症を起こす病気ですが、口の症状が最初に出ることもあります。甲状腺機能低下症など、体の代謝に異常をきたす病気でも、全身のむくみと共に唇が腫れることがあります。血液の病気、例えば白血病などでも、歯茎や唇が腫れたり出血しやすくなったりすることがあります。さらに、リンパの流れが悪くなることで、特定の部位がむくむ「リンパ浮腫」が唇に生じることもあります。遺伝性血管性浮腫(HAE)のように、遺伝的に血管の透過性が亢進しやすく、全身の様々な部位に繰り返し浮腫を起こす病気もあります。これらの全身疾患が原因の唇の腫れは、単に唇だけを治療しても根本的な解決にはなりません。原因となっている全身疾患の治療が必要です。もし唇の腫れが長期間続いている、繰り返し起こる、あるいは唇以外の全身症状(発熱、倦怠感、腹痛、関節痛など)を伴う場合は、自己判断せずに医療機関(皮膚科、内科、あるいは総合病院)を受診して詳しい検査を受けることを強くお勧めします。
唇の腫れ体のSOS?隠れた病気