これからのインフォームドコンセントに求められること
インフォームドコンセントは日本の医療現場に定着しつつありますが、全てにおいて理想的な形で機能しているわけではありません。患者さんが本当に「わかりやすく」情報を得て、納得して医療を選択するためには、これからさらに改善が必要な点があります。一つは、医療者側の説明スキルの向上です。専門知識を分かりやすい言葉に翻訳し、患者さんの理解度に合わせて伝える技術は、すべての医療者に求められます。一方的に説明するのではなく、患者さんの疑問を引き出し、対話を通じて理解を深めるコミュニケーション能力も重要です。二つ目は、患者さんが情報を得やすい環境整備です。説明の際の資料を工夫したり、インターネット上で病気や治療に関する信頼できる情報を提供したりするなど、様々なツールを活用することが考えられます。診察時間が限られている中で十分な説明を行うための時間的確保も課題です。三つ目は、患者さん自身の意識の変化です。「先生にお任せ」という受け身の姿勢ではなく、自分の体や健康に対して主体的に関わろうとする意識を持つことが、質の高いインフォームドコンセントを受けるためには不可欠です。分からないことは質問する、納得できないことははっきり伝える、といった能動的な姿勢が求められます。四つ目は、医療者と患者さん双方の文化や価値観の多様性を理解することです。同じ説明でも、患者さんの背景によって受け取り方は異なります。個々の患者さんに寄り添った柔軟な対応が必要です。テクノロジーの進化も、今後はインフォームドコンセントに影響を与えるでしょう。例えば、オンラインでの説明や、AIを活用した情報提供なども考えられます。これらの課題に取り組み、医療者と患者さんがより対等な立場で協力し合えるような関係を築いていくことが、これからのインフォームドコンセントに求められています。