インプラント周囲に起きるMRIの影響
歯科インプラントが入っている方がMRI検査を受ける際に、具体的にどのような影響が考えられるのでしょうか。最も懸念されるのは、金属による発熱と画像への影響(アーチファクト)です。インプラント本体がチタン製であれば、本体自体の発熱リスクは低いとされています。しかし、上部構造やネジなどに磁性を持つ金属が含まれている場合、MRI装置が発する高周波によって誘導電流が生じ、局所的な発熱が起こる可能性があります。口の中は粘膜に囲まれているため、発熱が起こると火傷のリスクもゼロではありません。ただし、歯科インプラントの金属量は体の他の部位に埋め込まれる金属(人工関節など)に比べて少量であることが多く、深刻な発熱に至るケースは稀だと考えられています。次に、MRI画像への影響であるアーチファクトです。金属はMRIの磁場を乱す性質があるため、インプラント周辺の画像に黒い影や歪み(アーチファクト)が生じることがあります。このアーチファクトが大きい場合、インプラント周辺だけでなく、脳などインプラントから離れた部位の画像診断にも影響を与える可能性があります。特に、脳や頭頸部のMRI検査を行う場合は、インプラントの存在が診断の妨げになる可能性が高まります。MRI検査を依頼した医師は、このようなアーチファクトの発生を考慮して、撮影方法を調整したり、他の画像診断法(CT検査など)を検討したりすることがあります。患者さんとしては、インプラントがあることを正確に伝えることで、これらのリスクを最小限に抑え、適切な検査を受けてもらうための配慮を得ることができます。