高齢者のインフォームドコンセントの難しさ
高齢者のインフォームドコンセントは、いくつかの点で難しさを伴うことがあります。加齢に伴う記憶力や判断力の変化、複数の病気を抱えていることによる説明の複雑さ、あるいは医療に関する古い価値観などが影響する場合があります。まず、医師からの説明を一度で全て理解し、記憶しておくことが難しい場合があります。専門的な内容や複雑な病状の説明は、高齢者でなくとも理解が難しいものですが、特に加齢による認知機能の変化がある場合には、より一層の丁寧さが必要となります。また、複数の病気を抱えている場合、それぞれの治療法や薬の影響が複雑に絡み合い、説明が多岐にわたるため、全体像を把握するのが難しくなることがあります。さらに、高齢者の中には、「先生にお任せします」といったように、医師に全てを委ねるべきだという考え方を持っている方も少なくありません。自己決定権の概念が浸透していない世代や、遠慮から自分の意見や不安を伝えにくいと感じる方もいるかもしれません。こうした難しさを乗り越えるためには、医療者側はより時間をかけて、ゆっくりと、分かりやすい言葉や具体的な例えを用いて説明することが求められます。家族や信頼できる第三者が同席し、説明をサポートすることも有効です。患者さんのペースに合わせて繰り返し説明したり、疑問点を引き出すように促したりすることも大切です。何よりも、高齢者本人の意思や希望を最大限に尊重し、本人が納得できる形での意思決定を支援することが、質の高いインフォームドコンセントに繋がります。