歯の健康に良いとして知られるキシリトール。これもまた、エナメル質の再石灰化をサポートする頼もしい味方です。キシリトールは天然の甘味料で、砂糖とほぼ同じ甘さがありますが、虫歯菌はキシリトールを分解して酸を作り出すことができません。つまり、キシリトールを摂取しても口の中が酸性にならないのです。これは、虫歯菌の栄養源にならないという点で、砂糖と大きく異なります。さらに、キシリトールには虫歯菌の活動を弱める働きもあります。キシリトールを摂取した虫歯菌はエネルギーをうまく作り出せなくなり、酸を産生する能力が低下します。また、歯の表面に付着するプラーク(歯垢)の量や粘着性を減らす効果も報告されています。そして、キシリトールの最も注目すべき効果の一つが、唾液の分泌促進作用です。キシリトールを口にすると、冷涼感や甘みによって唾液腺が刺激され、唾液がたくさん出ます。前述したように、唾液は口の中の酸を中和し、再石灰化に必要なミネラルを含んでいるため、唾液が増えること自体が再石灰化を助けます。キシリトールを摂取するなら、食後にキシリトール100%のガムやタブレットを噛むのが効果的です。特に、虫歯菌が酸を作り出す食後すぐに摂取することで、脱灰を抑え、再石灰化を促す環境を素早く整えることができます。ただし、キシリトールであればどんな製品でも良いわけではありません。キシリトールの含有量が50%以上のもの、できれば100%のものを選ぶことが重要です。パッケージの成分表示をよく確認しましょう。キシリトールはエナメル質を直接「再生」させるわけではありませんが、再石灰化を促進し、脱灰を抑えることで、エナメル質を強く保つための非常に有効な手段となります。