大人のグラグラした歯が邪魔に感じて、「自分で抜いてしまおうか」と考える方がいるかもしれません。しかし、子供の乳歯と違い、大人の永久歯は自分で抜くのは絶対に避けるべき行為です。自分でグラグラの歯を抜くことには、計り知れない危険が伴います。最も大きなリスクは「感染」です。口の中には常にたくさんの細菌がいます。清潔でない手や器具を使って無理やり歯を抜こうとすると、傷口から細菌が侵入し、抜歯窩（歯を抜いた後の穴）が感染して化膿したり、さらに炎症が広がり顔が腫れたり、全身に影響を及ぼしたりする可能性があります。次に危険なのが「大量出血」です。歯の周りには血管が張り巡らされています。無理に抜こうとして血管を傷つけると、出血が止まらなくなってしまうことがあります。歯科医院であれば適切な止血処置が可能ですが、自分で行う場合は対処が難しく、貧血を起こしたり、命に関わる事態になったりする危険性もゼロではありません。「神経損傷」のリスクもあります。歯の根の近くには神経が通っています。無理な力を加えることで神経を傷つけてしまい、唇や舌などに麻痺やしびれといった後遺症が残る可能性があります。「歯根の破折」も起こり得ます。歯の根が途中で折れて骨の中に残ってしまうと、そこが感染源になったり、後で取り除くのが非常に困難になったりします。そして何より、「激しい痛み」を伴います。麻酔なしで大人の歯を抜くことは、想像を絶する痛みを伴い、強い恐怖心やトラウマになりかねません。歯科医院では、適切な麻酔と器具を使い、安全に抜歯を行います。また、抜歯後のケア（止血、感染予防、痛みのコントロールなど）も専門的な知識に基づいて行われます。大人のグラグラの歯は、子供の歯のように簡単に抜けるわけではなく、必ず専門家による処置が必要です。危険な自己判断は絶対にせず、必ず歯科医院を受診してください。