エナメル質の再石灰化を促進し、歯を強くするために最も広く推奨されている成分の一つがフッ素です。フッ素は自然界に存在する元素で、歯の質を強くする働きがあります。フッ素がエナメル質の表面に取り込まれると、歯の成分であるハイドロキシアパタイトという結晶構造の一部が、より酸に強いフルオロアパタイトという結晶に変化します。これにより、虫歯菌が作り出す酸に対するエナメル質の抵抗力が高まります。また、フッ素は再石灰化のプロセスそのものも促進します。唾液中のカルシウムやリン酸がエナメル質に戻るのを助け、脱灰によって溶け出した部分の修復を効率的に行います。さらに、フッ素は虫歯菌の活動を抑制し、酸の産生を抑える効果も期待できます。このように、フッ素は「エナメル質を強くする」「再石灰化を助ける」「虫歯菌の活動を抑える」という3つの働きによって、虫歯予防に非常に効果を発揮します。フッ素を歯に取り込む方法にはいくつかあります。最も一般的なのは、フッ素入りの歯磨き粉を使うことです。毎日の歯磨きでフッ素を歯に供給できます。特に、フッ素が高濃度で配合された歯磨き粉は、より高い虫歯予防効果が期待できます。その他にも、フッ素洗口液を使ったブクブクうがいや、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士が高濃度のフッ素を歯に塗布してもらう方法があります。特に、子供の歯はエナメル質が柔らかく虫歯になりやすいため、定期的な歯科医院でのフッ素塗布は非常に有効です。大人の歯にとっても、歯周病で歯茎が下がって歯根面(エナメル質より弱いセメント質)が露出している場合や、初期虫歯のリスクが高い場合には、フッ素によるケアが推奨されます。