クインケ浮腫による唇の腫れは、多くの場合は特別な治療をしなくても、1~3日程度で自然にゆっくりと消えていきます。腫れがピークに達するのに数時間から1日程度かかり、その後は徐々に引いていくというのが典型的な経過です。しかし、症状が出た原因や、浮腫の程度、体質などによって経過は異なりますし、早く症状を抑えたい、繰り返すのを防ぎたいといった場合には医療機関での治療が必要になります。クインケ浮腫の治療は、原因と症状の程度に応じて行われます。原因が特定できた場合は、まずその原因を取り除くことが最も重要です。例えば、特定の食べ物や薬が原因であれば、それらを避けるようにします。薬剤性の場合は、医師と相談して代替薬に変更します。症状が出ている最中の治療としては、腫れや不快感を抑えるための薬物療法が中心となります。アレルギー性や特発性のクインケ浮腫の場合、抗ヒスタミン薬が有効なことがあります。アレルギー反応を抑え、浮腫の発生や悪化を防ぐ効果が期待できます。腫れがひどい場合や、抗ヒスタミン薬だけでは効果が不十分な場合は、ステロイド薬が使用されることもあります。ステロイドは強力な抗炎症作用を持ち、腫れを早く鎮める効果があります。また、血液を固まりにくくする作用や、炎症に関わる物質の働きを抑える作用を持つトラネキサム酸が有効な場合もあります。遺伝性血管性浮腫(HAE)の場合は、これらの一般的な治療薬では効果がないことが多く、HAE専用の特異的な治療薬(補体に関わる薬剤など)が必要になります。クインケ浮腫は、症状が軽ければ自然に治ることも多いですが、再発を繰り返す場合や、原因が不明な場合、あるいは症状が重い場合は、必ず医療機関を受診して適切な診断と治療を受けるようにしましょう。