また、「耳鼻咽喉科」を受診するケースも考えられます。顎の周辺には、耳や鼻、喉といった器官があり、これらの疾患と症状が紛らわしいことがあるためです。例えば、耳の痛み(耳痛)は顎関節症の一般的な症状の一つですが、中耳炎や外耳炎といった耳自体の問題が原因であることもあります。また、顎の運動障害が、嚥下障害や発声障害と関連している可能性もゼロではありません。しかし、耳鼻咽喉科は顎関節そのものの疾患を専門としているわけではありません。顎関節症を疑って耳鼻咽喉科を受診した場合、まずは耳や鼻、喉に異常がないかを確認し、異常がなければ他の専門科(主に歯科口腔外科)への受診を勧められることが一般的です。精神的なストレスや生活習慣が顎関節症の発症や悪化に大きく関わっていることが知られています。歯ぎしりや食いしばりといった癖は、ストレスによって無意識のうちに強まることがあります。また、うつ病や不安障害といった精神疾患が顎関節症の症状を増悪させる可能性も指摘されています。このような場合、心療内科や精神科でのカウンセリングや薬物療法が、顎関節症の治療の一環として有効なことがあります。しかし、これも顎関節症自体の直接的な治療を行う科ではなく、あくまで関連要因へのアプローチとなります。したがって、まずは歯科口腔外科などで顎関節の状態を診断してもらい、必要に応じてこれらの科を紹介されるという流れが一般的です。稀なケースとしては、神経系の疾患が顎の痛みを引き起こしている場合など、「脳神経内科」や「脳神経外科」を受診することもあり得ます。三叉神経痛のように、顔面の神経の異常が強い痛みを引き起こし、顎関節症と間違われることもあります。しかし、これは非常に特殊なケースであり、多くの顎関節症は神経痛とは異なるメカニズムで痛みが生じます。まずは一般的な顎関節症を疑って歯科口腔外科を受診し、鑑別診断の過程で神経系の疾患が疑われた場合にこれらの科への紹介となるでしょう。