口臭の原因のほとんどは口の中にある、とは言え、もちろん、内臓の不調が原因で口臭が発生することも、稀にですが存在します。これらは「病的口臭」の中でも、特に全身疾患に由来するものとして分類されます。では、本当に「胃」が原因で口臭がする場合、それはどのような病気が考えられ、どんな特徴的なニオイがするのでしょうか。まず、胃からの口臭として、最も直接的に考えられるのが「逆流性食道炎」です。これは、胃酸や、消化途中の食べ物が、食道の入り口の筋肉が緩むことで、食道へと逆流してしまう病気です。この場合、口臭は、酸っぱいニオイ、あるいは、腐ったような食べ物のニオイが特徴です。口臭だけでなく、胸焼けや、喉の違和感、呑酸(どんさん)と呼ばれる、酸っぱいものが込み上げてくる感覚など、他のつらい症状を伴うことがほとんどです。また、胃の中で「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」に感染している場合も、口臭との関連が指摘されています。ピロリ菌は、胃の粘膜に生息し、アンモニアを産生します。このアンモニアが、ゲップなどと共に口から排出されたり、あるいは、血液中に吸収されて肺から呼気として排出されたりすることで、ツンとしたアンモニア臭の原因となることがあるのです。ピロリ菌は、慢性胃炎や胃潰瘍、そして胃がんのリスクを高めることでも知られています。さらに、胃の働きが著しく低下する「胃がん」が進行した場合にも、胃の中で食べ物が異常発酵し、壊疽臭(えそしゅう)と呼ばれる、腐敗したような特有の口臭が発生することがあります。ただし、これは、かなり進行した場合の話です。胃以外にも、内臓の病気が、特有のニオイを伴う口臭を引き起こすことがあります。例えば、糖尿病が進行すると、甘酸っぱい、アセトン臭(果物が腐ったようなニオイ)がすることがあります。また、肝機能が低下すると、アンモニア臭(ドブのようなニオイ)、腎機能が低下すると、同じくアンモニア臭(尿のようなニオイ)がすることが知られています。これらの内臓由来の口臭は、いずれも、口臭だけでなく、それぞれの病気に特有の全身症状を伴います。もし、口の中を清潔にしても改善しない口臭と共に、胸焼けや胃痛、あるいは、その他の体の不調を感じる場合は、消化器内科などの専門医に相談することが重要です。
胃からの口臭は存在する?考えられる病気と特徴的なニオイ